水道水の『有機物(TOC)』とは?危険性は?【水質基準項目】

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水質基準項目の有機物(TOC)の記事

水道水の水質基準項目、ご覧になりましたか?
全部で51項目あるうちの、46個めに「有機物(全有機炭素(TOC)の量)」というものがあります。

「水質基準項目と基準値(51項目)」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/kijunchi.html#01

TOCは「Total Organic Carbon(全有機炭素)」という意味で、水質を測定するための指標として、水道水以外でもよく使われるものです。
また、有機物は炭素「C」が含まれる”複雑な構造をした”物質のことです。
とは言っても、複雑な話をするつもりはありませんけどね。

「全有機炭素」Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/全有機炭素

「有機化合物」Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/有機化合物

水道水には、様々な有機物が含まれてるんですよ。
例えば、水質基準項目に設定されている「ベンゼン」や「四塩化炭素」「ジオキサン」なども有機物ですし、他にもたくさんあります。

これらの有機物の「炭素の量」だけを計測し、基準値以内に収めて問題解決するのがこの「有機物(全有機炭素(TOC)の量)」の項目です。
水道水を酸化させる(酸素「O」を「C」にくっつける)と、二酸化炭素が生じます。
この二酸化炭素の量を測れば、元々の水にどれだけ炭素が含まれていたか?がわかるようになっています。

そんな有機物(TOC)の水質基準値は「3mg/L以下」となっており、0ではありません。
つまり、基準をクリアした水道水にも、有機物が微量入ってるかもしれないということ。
家庭の蛇口から出てくる水道水を飲むと、微量の有機物を摂取してしまう可能性があるんです。

果たして、大丈夫なんでしょうか?
水道水中の有機物に毒性はないのか?

この記事では、そんな「有機物(TOC)」のことや、水道水の飲用・使用リスクなどについて解説していきます。
どうぞ最後まで、ごゆっくりご覧ください。

TOCの値が高い水は「まずい」?

大きな口を開けて嘆く子供

有機物が多く含まれた水道水を口に含むと「渋味」を感じるとされています。
渋味は「収れん味」とも呼ばれますが、味覚よりは”触覚”寄りの感覚ですね。

身近なものでは、お茶やワイン、柿に含まれる「タンニン」などで、似たような感覚を得ているかと思います。

一応、この「有機物(全有機炭素(TOC)の量)」という項目は、その値が高いと“水道水に異臭味をつけてしまう”ということで、設定されています。
確かに、ただの水道水なのに渋味なんて感じたら、違和感がすごいですよね。

このTOCの値がどの程度になると渋味を感じるのか?という情報はありませんでした。
ですが、TOCの前に炭素量を測る指標として使われていた「過マンガン酸カリウム消費量」の値を考慮して、現在の「3mg/L以下」という水質基準値が設定されています。
この値以下にTOCが抑えられていれば、少なくとも有機物全般由来の渋味は感じられないはずです。

「有機物質(過マンガン酸カリウム消費量)」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/dl/moku22.pdf

「III.化学物質に係る水質基準」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/03/dl/s0303-5e.pdf

ちなみに、過マンガン酸カリウム消費量の方は、水質基準項目からは外れたものの、今も「水質管理目標設定項目」で計測されています。
過去に厚生省(現:厚生労働省)が発表した「おいしい水の要件」では、この過マンガン酸カリウム消費量”3mg/L以下”がおいしい水だそうですよ。
この基準値が、そのままTOCにも反映されている感じですね。

また、浄水場を通る前の原水に有機物が多く含まれていると、塩素消毒の工程で多量の塩素が必要になるため、渋味とは別に「強い塩素臭」がついてしまうという側面もあります。

さらに、有機物のリスクはそれだけではありません。
以下をご覧ください。

水道水に含まれる有機物の「毒性」は?

水道水とグラス

TOCの測定では、具体的にどの種類の有機物がその水に含まれているのか?というのはわかりません。
ですが、水道水にどんな有機物が多く含まれるか?というのは、だいたいわかっています。

  • 難分解性有機物(フミン酸、ジオキサンなど)
  • 有機酸(クエン酸、酢酸など)
  • その他有機物(炭水化物・油脂類・アルコールなど)

よくわかる最新水処理技術の基本と仕組み」より

生活排水や工業排水などが原水に流入することで、上記のような有機物が水道水に入っていきます。
これらが、TOCの基準値ギリギリかそれ以上の値になっていると、渋味などの異臭味を感じてしまうことになるでしょう。

ですが、大抵の有機物は通常の浄水過程で取り除かれます。
上記のような有機物が水中に含まれるリスクは、実は”味”よりももっと別のところにあるんです。

上記の有機物のうち、フミン質などの「難分解性有機物」は、文字通り除去が難しい物質です。
これが浄水場内で取り除かれないまま、塩素消毒の工程まできてしまうと…
人体に有害な“トリハロメタン”が生成されてしまうんです。

水質基準項目に設定されているトリハロメタンは全部で4種ありますが、特に生成量が多い「クロロホルム」は、毒物及び劇物取締法で「劇物」に指定されており、“発がん性”まで兼ね備えています。
環境汚染物質としても危険視されており、有害物質以外の何者でもありません。

こういった、塩素と有機物の反応によって生成されてしまう「消毒副生成物」は他にもいくつかあり、どれもヤバいやつです。
そして、どれも”炭素”が含まれた有機物。

つまり、浄水場を通ってキレイになった後の給水栓水で「TOCが3mg/L」となっていた場合、有害物質ばかりが寄り固まって3mg/Lの炭素を表している可能性もあるということです。

もちろん、クロロホルムのように毒性の高いものは、水質基準項目によって、それ単体で基準値が設けられていますけどね。
たとえTOCの値が基準をクリアしていたとしても、それだけで安心してはいけないということです。

水道水のTOCは「今」どうなってる?

水道事業02

異臭の原因になり、さらに塩素と反応すると体にも悪い有機物。
実際のところ、水道水にはどの程度入ってるんでしょうか?
見ていきましょう。

水道水質データベース「水質分布表」を見てみると、日本の水源の水(原水)とTOCの関係は、以下のようになっています。

  • TOCが水質基準値以上になっている水源は結構ある
  • TOCが基準値ギリギリまで含む水源もかなりある
  • ほとんどの水源で、TOCの含有量は基準値の半分以下

対して、浄水場でキレイになった後の給水栓水は、以下のようになっています。

  • すべての給水栓水は、TOCが基準値以内になっている
  • ほとんどの給水栓水で、基準値の半分以下までTOCが除去されている
  • 基準値ギリギリのTOCが残ってる給水栓もある

「水質分布表2019原水(平均)」水道水質データベース
http://www.jwwa.or.jp/mizu/pdf/2019-b-01gen-02avg.pdf

「水質分布表2019浄水-給水栓水等(平均)」水道水質データベース
http://www.jwwa.or.jp/mizu/pdf/2019-b-04Jyo-02avg.pdf

上記からわかることは、有機物は元々日本の水源に結構含まれているものの、入っていてもある程度は浄水場で除去されるようになっているということ。

実際、有機物は「凝集沈澱」や「ろ過」また「オゾン」「活性炭」等で取り除けるようになっています。

ただ、そうなると塩素消毒を通ってキレイになった水に含まれる有機物のほとんどは「有害物質」である、という可能性が出てきます。
塩素消毒の副産物は人体に毒性のあるものが多いので、TOCだけでなく他の水質基準項目も確認しつつ、飲んだり使ったりする水道水には「どの程度の有機物が含まれているのか?」と、意識しておいた方が良いでしょう。

ちなみに、上記の水質分布表では”場所”を特定できません。
あなたの地域の水道水質の、”最新”の検査結果を知りたい場合は、管轄の水道局などのホームページで確認する必要があります。
その方法は、以下の記事でご覧になれます。

「給水栓水」に含まれる有機物はヤバい?

アンノウン怪しいモノクロの白い人

この記事では、水道水の水質基準に設定されている「有機物(TOC)」のことや、水道水の飲用・使用リスクなどについてお伝えしてきましたが、いかがでしたか?
まとめると、以下です。

記事の要約は…
  • TOCが高く、有機物が多く含まれる水は「渋味」があるが、原水の有機物はたいてい除去される
  • 除去が困難な「難分解性有機物」が塩素処理されることで、有害な有機塩化物が生成される
  • 浄水場を出た後の水道水(給水栓水)に含まれる有機物のほとんどが、毒性を持っている可能性が高い

水源の水と、浄水場を通った後の水では、含まれる有機物の種類が全然違います。
渋味があるとされる有機物は、たいてい浄水場で除去されるため、家庭の蛇口の時点で有機物由来の渋味を感じることは少ないかもしれません。

ですが、その代わりに「トリハロメタン」などの有害な“有機塩素化合物”が多く含まれている可能性があり、TOCの値が高水準の水道水を飲んだり、料理に使ったりするのはリスクが高いと言えます。
水道水を体内へ取り込む際は「自分の身は自分で守る」という意識を持ちつつ、普段から何かしらの対策を打っておくことをオススメします。

  • 家庭の水道水には”何”が入っているのか、把握しておく
  • 近隣の「水道情報」に気を配る
  • 浄水器を使って自宅で有害物質を除去する

あなた自身や家族の健康を守るためにも、毒性のある有機物をできるだけ体内に取り込まない工夫をしておきましょう。

それでは、今後も健やかな生活をお送りください。

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