【水道水】異常な『味』『臭気』とは?水質基準項目を解説

この記事は約9分で読めます。

記事内に「PR」や「アフィリエイト広告」を含む場合があります。

水質基準項目の味と臭気の記事

水道水の水質基準項目、ご覧になりましたか?
全部で51項目あるうちの、48個めに「味」
そして、49個めには「臭気」というものがあります。

「水質基準項目と基準値(51項目)」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/kijunchi.html#01

味もニオイも、水道水の”おいしさ”に関わってくる項目ですね。
水道水をそのまま飲む場合は、口や鼻から直で感じるものです。

また、水道水でお茶やコーヒー等を淹れるにしても、その出来上がった飲み物の90%以上は水。
元の水のおいしさはわからないでも、変な味やニオイは”雑味”として感じてしまうものです。

料理に水道水を使う場合は、水の味もニオイもほとんどわからないかもしれません。
ですが、調理するものや、水道水の臭味の元(成分)によっては、味つけの邪魔をしてしまったり、雑味が乗ったりすることもあるでしょう。

そんな、水道水の味と臭気。
水質基準は「異常でないこと」とされています。

めちゃめちゃざっくりしてますよね。
他の水質基準項目は、だいたい”数値”で示されているんですよ。
味もニオイも、数値の測定はできないということなんでしょうか?

こうなると、その「異常でないこと」をどうやって検査・チェックしてるのかも、気になってきますよねw

ということで、この記事では、水道水の「味&臭気」の原因や検査方法、おいしい水の条件などについて解説していきます。
どうぞ最後まで、ごゆっくりご覧ください。

水道水の”異常”な「味」「臭気」って、どんなの?

鼻つまむクサイニオイひと

人間が舌で感じられる味覚は、いろいろありますよね。
現状は、五基本味として「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」「うま味」が挙げられています。
他にも「辛味」「渋味」「金属味」「コク味」など、いろんな味が”6番目の基本味”として研究されていますね。

対して、嗅覚はかなり繊細です。
コーヒーや酒などに使われる”フレーバーホイール”というものを、見たことはありますか?
これ、100種以上の香り・ニオイが、細かく区別されているんですよ。

「嗅覚」Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/嗅覚

「風味を豊かに表現するフレーバーホイールについて」UCCコーヒーアカデミー
https://www.youtube.com/watch?v=bJ2wkQat3Gg

水のおいしさは、厳密に言えば味覚と嗅覚の組み合わせ(風味)によって様々です。
水道水のおいしさやマズさを、味覚だけで正確に語るのは難しいでしょう。
もちろん、その逆に嗅覚だけでも語れません。

ところで、水道水の臭味の水質基準は「異常でないこと」でしたね。
つまり“おいしさ”までは求めてないんです。
この項目での100点満点は「無味無臭」です。

では、水道水での”異常”には、どんなものがあるんでしょうか?

水道水につく「異臭」は、だいたいコレ

特に不快なニオイは、以下のようなものです。

  • 植物性臭
  • 土、かび臭
  • 腐敗性臭
  • 生臭、魚臭
  • 金属臭(鉄など)
  • 薬品性臭
  • 芳香性臭

「水質分布表2019原水(平均)」水道水質データベース
http://www.jwwa.or.jp/mizu/pdf/2019-b-01gen-02avg.pdf

水道水の異臭は、上記のように分類されていて、これ以外は「その他」に含まれます。
1番多いのは「植物性臭」で、次が「土、かび臭」
これが水道水の原水における臭気の2強です。

植物性臭は、その名の通り植物特有のアレですね。
土・かび臭は、水質基準項目に設定されている「ジェオスミン」や「2-メチルイソボルネオール」が原因です。
他にも、医療機関のような「消毒臭(クロロフェノール等)」や、吐瀉物のような「強酸臭(ホルムアルデヒド等)」あと「溶剤臭」「エーテル臭」「甘い香り」等もつく可能性があります。

不快なニオイは、臭気物質の含有量がかなり微量でもわかるため、口に入れて味わう前に”異常”を判断できます。
ただし、有機溶剤系などの揮発しやすいものは、ニオイと共に有害物質自体も吸引してしまうので単純に危険です。

水道水の不快な「味」は、だいたいコレ

一方、不快な味については、主に以下です。

金気は「カナケ」と読みますが、鉄の味やニオイのことです。
渋味は厳密に言えば”味覚ではない”ですが、口の中が不快であることに変わりはありません。

不快なニオイと比べると、不快な味は普段からよく経験・体験していますよね。
苦味も塩味も、食事をおいしくいただける要素ですし、渋味は柿やお茶などで味わいます。
鉄の味は、口の中を切ったりするとどうしても感じてしまうものです。

これらの味は、無味無臭であるはずの(と勝手に期待してしまってる)「水」につくからこそ”不快”と感じます。
ですが、異臭の方は普段から口にするものでもなければ、好んで近づくこともありません。
つまり、異臭がする水は、”よりリスクが高い”と言えます。
もし、あなたの自宅の蛇口から出てきた水道水からこんなニオイがしたら…飲用はもちろん、使用も控えた方が良いでしょう。

あなたの認識とはちょっと違う?「異臭味」の基準

ちなみに、これらの臭味物質は、正常に浄水処理されていれば大半は取り除かれています。
そもそも、水質基準で「異常でないこと」とされているため、臭味が異常な水道水は、水道法によって供給不可です。

つまり、蛇口から出てくる水道水からこのような味やニオイを感じることは、ほぼありません。

ですが、水道水が“くさい”と思ったこと、ありますよね?
私はあります。
というか、常日頃から思ってます。

その正体は「カルキ臭」「塩素臭」と呼ばれるものです。

この2つは、水道水の消毒に使われる塩素(次亜塩素酸ナトリウム等)自体のニオイだったり、塩素と水中の不純物が反応して生成される物質のニオイだったりするんですが…
塩素消毒をやめることはできないので、浄水場の時点でこれらのニオイを消すことはほぼ不可能です。

なので、水質基準項目の「味」「臭気」では、これらのニオイはスルーされています。

水道水の「異臭味」は、どうやって調べてる?

みず水とコップグラス

ここからは、1番気になる「味&臭気」の検査方法についてです。
これ、実は「官能法」といって、機器に頼らず人が実際に口に入れたり嗅いだりして確認しています。

「官能検査」Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/官能検査

厚生労働省では、

「嗅覚及び味覚の感度は、現在利用できる最も高感度の分析機器よりも性能がよく、しかも試料の臭味の種類を表現できる唯一の分析方法」

と、ものすごく高評価されています。

ここで、ちょっと想像してみてください。
浄水場を通った後のキレイな水道水なら全然良いですが、水源の、何が入ってるかわからない原水までも口に入れてチェックするんですよ。
口に入れるだけならまだしも、しっかり呼吸をしながら舌の上を転がして、その異臭や不快な味を分類してるんです。
ヤバいですよね。
このような大変な仕事をしてくれる人たちがいるからこそ、あなたも私も、比較的安全に水道水を利用できているとも言えます。

ちなみに、味と臭気の検査方法を見ると「塩素味以外で」「塩素臭以外で」との記述があります。
このことからも、私たちが常日頃から不快に感じている”塩素由来”のニオイや味が、スルーされていることがわかります。
水道水の残留塩素は、法によって決められていることなので、この先も改善されることはないでしょう。

水道水がおいしくなる?「おいしい水」の条件とは

みず水と氷アイスとコップグラス

水道の水質基準項目「味」と「臭気」では、それぞれ”異常でないこと”が目指されていましたね。
100点満点は”無味無臭”です。
ですが「おいしい水」を目指す項目も、過去にありました。

それが、昔、厚生省(現:厚生労働省)の”おいしい水研究会”が発表した「おいしい水の要件」です。
もう今はネット上を探しても母体がないんですが、あらゆるサイトで引用されており、おいしい水の基準として使われています。
また、”おいしい水の要件”の内容は、実は水質基準項目とは別の「水質管理目標設定項目」や「水道に関連する項目」に組み込まれていたりします。

水質項目要件値内容
蒸発残留物30〜200mg/L量が多いと苦味・渋味等が増す。
硬度10〜100mg/L硬度の低い水はクセがなく、万人にとって飲みやすい。
遊離炭酸3〜30mg/L量が多いと刺激が強くなる。
過マンガン酸カリウム消費量3mg/L以下量が多いと水の味を損なう。
臭気度3以下いろいろな臭いがつくと、不快な味がする。
残留塩素0.4mg/L以下水にカルキ臭を与え、濃度が高いと水の味を悪くする。
水温最高20°C以下冷やすことでおいしく感じる。
おいしい水の要件(おいしい水研究会)

一般家庭で今すぐどうにかできるのは、せいぜい「水温」程度でしょうか。
冷蔵庫に入れれば一発解決です。

その他の蒸発残留物、硬度(カルシウム&マグネシウムの量)、遊離炭酸、過マンガン酸カリウム消費量(有機物の量)、臭気度、残留塩素については、浄水器を使えば大抵は調節(多いものを減らす方へ)できるようになってますね。

水道水の「無味無臭」はありえない?

水道水とグラス

この記事では、水道水の水質基準に設定されている「味&臭気」の原因や検査方法、おいしい水の条件などについてお伝えしてきましたが、いかがでしたか?
まとめると、以下です。

記事の要約は…
  • 水道水の不快な味や異臭の主な内容は「植物性臭」「土、かび臭」「苦味」「塩味」など
  • 水道水の異常な臭味は、実際に「人」が口に入れたり嗅いだりしてチェックしてる
  • 水道水がおいしくなる”おいしい水の要件”のうち、すぐに実践できるのは「冷やす」こと

日本の水道水において、味と臭気の水質基準は「異常でないこと」。
これはつまり、数字で表すと「0」です。
「1」はありえません。

もちろん、個人差はあるでしょう。
ですが、厚生労働省の資料には、以下のような記述があります。

「消費者にいやな思いを抱かせることがあってはならない」
「消費者が許容する臭味の種類や強さに関しては個人差が大きいことも考慮する必要がある」

このことから、“幅広い国民”を対象にして「異常でないこと」をクリアしている可能性が高いです。

ただし、この水質基準は「塩素味」「塩素臭」が無視されています。
また、水道法によって塩素の残留・含有は必須。
そのため、水道水には必ずと言って良いほど「カルキ臭」や「塩素臭」がついてます。

“おいしい水の要件”でも、残留塩素「0.4mg/L以下」の水がおいしいとされていますが、これを超える給水栓は結構多いです。

水道水には、確かに異常な味やニオイはついていないかもしれません。
ですが、不快な「カルキ臭」や「塩素臭」がしますし、浄水器を設置するなどの対策を打たない限り、回避は困難です。

あなたの家庭の蛇口から出てくる水道水には、何が入っていますか?
その水道水の味やニオイは、何が原因でしょうか?
「自分の身は自分で守る」という意識を持って、普段何気なく使ったり飲んだりしているものに責任を持てるよう、水中に含まれる成分を把握しておくことをオススメします。

それでは、今後も健やかな生活をお送りください。

タイトルとURLをコピーしました